高校進学の新しい風 (第1回)
§1 新時代の高等教育のあり方
~都立高校の新しい形態~
◎チャレンジスクール
15年ほど前まで、およそ現在中学3年生をお子さんに持つご父母の方々の学生時代は、全日制(昼 間)普通科、商業高校、工業高校、総合高校、そして定時制高校(夜間)といった区分が一般的 な高校だったことでしょう。 現在は、少子化が急速に進んだ上に在日外国人の増加につれ、多種多様な家庭環境や生徒さん個々 の状況に合わせた学校改革が各地で行われています。
その改革の先駆けとなるのは、やはりこの首都東京です。 東京都では、チャレンジスクールと名づけた一群を2000年4月に北区の桐ヶ丘高校からスタート させています。 チャレンジスクール(神奈川ではクリエイティブスクール、埼玉ではパレットスクールと呼ぶ)の 主旨は、小中学校での不登校や高校中退など、学校へ十分に通い切れなかった生徒を支援するこ とにあります。
最大の特徴は、高校入試の常識である、いわゆる入学試験(5科目のテスト)がないことです。 また過去の不登校や高校中退者も同列に扱うため、出身校の調査書提出も不要です。つまり内申 書が不要であり、出席日数が?であったりオール1であっても入学のチャンスが与えらえています。 選抜方法の主眼は、意欲を計ることにおき志願申告書と作文、そして面接が実施されます。
入学後の留年制度がなく、最長6年間は在籍可能です。 まるで大学のようですが、大学はむしろ留年がききます。 つまり1年ごとにやり直せるというわけです。しかし、チャレンジスクールは留年ができません。 留年をさせない代わりに、規定期間で単位が全て満たされなければ、卒業そのものができないと いうことでもあります。
全日制(昼間のみ)とは大きく異なり、基本的には午前部、昼間部、夜間部の三部制であり、こ のことが過去の夜間高校の頃の定時制との大きな違いです。 そして、普通科や商業高校とは異なり、学校ごとに多様な選択科目を選べる単位制の総合高校と いう位置づけなのです。
2016年(平成28)現在で、 桐ヶ丘高校(北区、JR赤羽) 世田谷泉高校(世田谷区、京王線千歳烏山) 大江戸高校(江東区、メトロ東西線東陽町) 六本木高校(港区、メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木) 稔ヶ丘高校(中野区、西武新宿線下井草) の5校が、チャレンジスクールの指定を受けています。
上記5校の入試の平均倍率は、例年1.5~2倍程度です。 全5校に通う生徒の内、不登校の経験者はおよそ7割を超えています。
◎エンカレッジスクール
初めてお聞きになる方も、多いのではないでしょうか。こちらの案内にも、いくどとなく出てく るチャレンジスクールのグループとともに都立高校の新しい取組枠のひとつの形です。
まず設置されている高等学校としては、現在は「練馬工業高校」の他、足立東高校、秋留台高校、 蒲田高校、東村山高校の5校となっています。 豊島区周辺をご自宅としますと、練馬工業高校1択となります。 また、他の4校が全日制普通科に対して、専門学科を持つのは練馬工業高校だけです。
★練馬工業高等学校
工業高校とはいえ、いわゆる電子科や機械科といった学科は存在せず「キャリア技術科」という 単科のみの設置です。 日本人が大切にしてきた“ものづくり”の基礎をしっかりと身につけさせ2年生の後半からは、各自 の選択による専門系列でコンピュータやデザイン、インテリア製作などの技術を学んでいきます。 普通科から大学へ進学するのとは異なり、卒業後にも社会で生きる力を身につけていくことがで きる、実践型の高等学校といえるでしょう。
肝心な入学試験では学科試験はありませんが、チャレンジスクールとは違い、内申点と出席日数 の基準は調査書に反映されます。 さらに、ものづくりの適性を測る実技検査、小論文(作文)と面接が主となり、何よりも本人の 向上心と好奇心が一番の課題といえるでしょう。
エンカレッジスクールは学校不適応の生徒も通学できるよう配慮された学校であり、授業カリキュ ラムも自由度が高く、社会進出のための基礎能力を養うことを指導方針としているのです。 先述の通り、学力や登校にきびしい過去を持つ生徒を『勇気づける(=encourage、エンカレッ ジ)』ことが建学の精神の柱です。 したがって、内申に1があったり出席日数が少なかったりしても、正直に相談していくことです。
入学後は学習につまづくことがないよう、授業時間は30分単位で、中学1年生から始めて中学校 全体の復習にかなりの時間を割いていきます。 そして最大の特徴は、定期考査(中間期末テスト)が一切ないことです。 これは、ものづくりを中心としたクリエイティブな部分を伸ばすことに主眼を置いており、制作 者としての個性を尊重するならば本来持ち合わせた才能は、試験により推し量れるものではない という考えに立脚しているからです。
場所は、メトロ有楽町線または副都心線の平和台駅から徒歩10分圏内です(練馬区早宮2-9-18)。
閑静な住宅街に囲まれて、地域の評判も上昇しています。 徐々に新キャンパスへの更新が進んでおり、校舎のみならず施設全体がきれいな学校に生まれ変 わります。 見学会に参加されれば、新しい校舎をご覧になれるでしょう。
(第1回 終わり)
(お断り)この文章は、個人の見解であり、クローバーの団体としての理念や考え方を反映したものではありません。