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無料学習支援の意義:貧困の連鎖を断ち切るために

貧困の連鎖を断ち切るために

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現代は格差社会だといわれています。よく知られているように、子どもの相対的な貧困率は年々上昇しており、2012年には16.3%になりました。6人に1人が貧困と見なされるわけで、約320万人が貧困状態にあることになります。

さらに、子どもがいる現役世帯の相対的貧困率が12.7%であるのに対して、片親家庭の子どもの貧困率は50.8%に及んでいます。片親家庭の子どもは半数が貧困に悩んでいるという結果です。この数字は先進諸国の中では最悪です。デンマークやスウェーデンではこの数字は10%を切っています。  この問題が切実であるのは、貧困が教育を通じて、固定化される恐れがあることです。貧困の連鎖と呼ばれるものです。残念ながら、日本の教育は、様々な面でお金がかかり、貧しい家庭に負担を強いています。本来であれば、学校の授業で十分な学力がつかなければおかしいのですが、実態は塾に通える生徒ほど、有利になっています。東大生の親世帯の平均収入は2012年で約1000万円だったそうです。

無料学習支援の意義

 この格差を克服する鍵は何でしょうか。  もちろん、国の政策が大事です。よく知られていることですが、日本の教育関連の公的支出はGDP比で3.8%(2011年の数字、OECD)で、先進諸国の集まりであるOECDの平均の5.6%を大きく下回っています。これに対して、北欧諸国は7%弱から9%弱、米国でも約5%です。日本は教育にかける支出自体は決して低くはないのですが、公的負担は小さい。つまり家計への負担が重いことを意味しています。  ボランティアによる無料学習支援はこうした社会の問題を、小さな努力の積み重ねで、緩和していこうという試みです。どんな子どもも教育を通じて、輝かしい未来を生きるチャンスを持たなければならない、という理念のもとに運営されています。  クローバーを例に、無料学習支援の特徴を、いくつかあげてみましょう。 第一に、お金がなくとも、週に1回~数回、学習のサポートが受けられます。宿題のわからないところを手伝うだけでなく、都立高校向けの受験指導、さらには面接や志望動機の書き方までサポートをしています。 第二に、指導が原則として個別であることです。生徒の抱えている問題は様々です。中には、小学校の内容を復習しなければならない中学生もいます。分数がわからない、比例が苦手だ、など。こうした子どもの事情に、一人一人寄り添って、丁寧にケアをしています。  第三に、学習支援の意義は、誰も排除せず、子どもたちが安心できる居場所を提供していることにあると思います。無料学習支援を利用する子どもたちは様々です。中には不登校だった事がある子ども、何らかの困難を抱えている子どももいます。しかし、誰でも受け入れる原則が守られています。

必要な中学校の協力

 無料学習支援にはもちろん限界があります。週に1回の学習会では、十分に学力を引き上げられないことも多いのは、容易に想像がつくと思います。このため、無料学習支援で実践していることの多くは、学校の宿題や問題集など、学校中心になっています。  勉強嫌いの子どもに聞いてみると、授業は「聞いていない」「寝ている」などの声が返ってきます。彼らにとっては、わからないことを聞かされているだけなのですから、無理もありません。このため、学習支援の目指すところは必然的に、「授業の内容がわかるようにする」事に置かれることになります。週1時間の学習会で、少しずつ学校でやっていることが理解できるようにする。そうなれば、学校での授業が意味のあるものになります。学習会で過ごす何倍もの時間が、生き返ることになるからです。  いま、我々のいる豊島区ではようやく小学校で、この大切さが認識され、学校との協力の下で、学校内や区民ひろば等で無料の学習会がもたれ、こうした取り組みが成果を上げています。問題は中学校です。中学校はどちらかというと、理解のあるところは少数で、学習支援会に否定的な態度をとるところもあるようです。  しかしながら、学習支援によって生徒が授業を理解すれば、それは中学校の先生方にとっても、中学校自体にも、大きなメリットがあることは自明の理です。彼らの興味が増し、授業がスムーズに進み、それは学力テストでの結果にも反映していくからです。無料学習支援は学校と敵対するのではなく、補完関係にあります。そのことを特に中学校が理解し、理解の遅れている子どもをそのままにせず、積極的に学習会を利用するように勧めてくれれば、それが最も子どもたちに良い結果につながります。

「学歴社会」に出て行く子どもたち

学習会に来る子どもたちの中には、やっても無駄だなどといって、ともすれば勉強から逃げようとする子が少なくありません。しかし、彼らが出て行かなければならない世の中には厳然として、学歴による機会の格差が存在します。たとえば大卒は、高卒とは異なる地点からのスタートが可能です。日本企業は大卒と高卒を別々に募集します。これは米国では違法です。生涯賃金にもはっきりとした差がありますが、中学生や高校生はそうした困難を十分理解していない気がしてなりません。目の前のこと、勉強のやる気のなさが将来のどのような差につながるかを自覚するのは、彼らには至難の業です。 吉川徹氏はその著書「学歴分断社会」の中で、「学校は公式に認められた格差発生装置」と述べています。それを肯定したくない気持ちがある一方で、我々大人が日常的に経験していることではないでしょうか。子どもたちはこうした現実社会に出て行き、生き抜かなければなりません。 厚生労働省の資料によると、大学卒の貧困率は7.7%なのに対して、高卒は14.7%、中卒(高校中退)は28.2%となっています。十分なサポートを受けられないと、子どもたちは高校を中退したり、安易に進学をあきらめたりしがちです。しかし、現実には学ぶことをあきらめないで一歩前に進むことができれば、貧困に陥るリスクは小さくなります。子どもたちを励まし、輝かしい未来に少しでも近づけたい。 無料学習支援は小さな存在ですが、大きな意義を持っていると思います。

(お断り)この文章は、個人の見解であり、クローバーの団体としての理念や考え方を反映したものではありません。

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